犬のしつけでよく見る「主従関係」は古い?間違い?賛否両論の理由とは

犬のしつけでよく見る「主従関係」は古い?間違い?賛否両論の理由とは

犬のしつけ関連の情報でよく見る言葉「主従関係」

しつけには欠かせないと書いてあるところもあれば、
「主従関係なんて古い考えだ、間違っている」なんて書かれているものもあって、

結局、主従関係ってなんなんだ?必要なのか?

と、私たち一般の飼い主を混乱させます。

この記事では、
巷の情報でよく見る「主従関係」という言葉と、その意味合いについてまとめてみました。

「主従関係」肯定派と否定派

著書やネット記事など、最近よく触れられている「主従関係」ですが、
考えを述べている人たちの意見は両極端に分かれています

しかし、さまざまな記事や文書の両者の意見を集めてみると、
「主従関係」という言葉の解釈の違いによるものであることが大半であることがわかります。

なぜかというと、「主従関係」という言葉の使われ方が、時代によって変化しているからです。

例えば、双方の意見の具体的な内容を見てみると、

否定派

主従関係なんて古い考えだ。今はもっと研究が進んでそれが間違いだと証明されている。リーダーは絶対という考えは犬を苦しめているし、行動学的にもおかしい。それよりも、信頼関係を築くべきだ。

肯定派

犬との関係性を築くのには主従関係は大切だ。行動学的に見ても、この関係性は重要だ。犬との生活で問題を起こさないようにするには、「飼い主の言うことは信頼できて安心だ」と思ってくれるような関係性が必要だからだ。

※一字一句同じことを言っているという意味ではありません。

実は、一昔前までは「主従関係」=「上下関係」「支配関係」だったのが、今どきの解釈では「信頼関係」のような心のつながりの意味で使う人も多く出てきています。

ちなみに、上記を見てもう一つわかることは、
両者とも「信頼関係」つまり「飼い主さんが、犬から見て安心してついていける存在になることが大切だ」という意見は一致しているということです。

つまり、「主従関係」が良い/悪いと意見が両極端に分かれる理由は、言葉の使われていた時代・世代による意味合いの認識の違いによるものということです。

割れた意見の真相

否定派の人は、「主従関係」=「上下関係」や、文字通り「主人に従わせる」と言う意味で使っている。

それに対し、
肯定派の人は、「主従関係」=「信頼関係」と言う意味で「心を向ける側(犬)、受け止めて守る側(人間)の関係性」というニュアンスで使っている。

《参考》「主従関係」という言葉の解釈の違いの例です。
次の2人の有名ドッグトレーナーは「主従関係」について意見が分かれているように見えますが、実は「犬と人間との関係性」への具体的な解釈は同じです。

否定派意見の例
有名雑誌『いぬのきもち』の創刊当時からの記事監修者として知られている西川文二さんは、ご本人監修の教材の紹介文の中で次のような意見を述べています。

《主従関係や忠誠心や服従心、優位性といったウソ》
飼い主が犬よりも上の立場にならないと犬が問題行動を起こす、だから忠誠心を持たせて服従させるといいということですね。
 そうすれば、問題行動はなくなって正しくしつけられるというわけです。しかし、残念ながら主従関係を構築するというパックリーダー理論(支配性理論)を犬に適用することは非科学的な考えであり、まともなしつけはできません

(中略)……犬と飼い主との間に必要なのは主従関係ではなく親子間のような信頼関係です。

西川文二監修 しつけ教材『犬のしつけ革命』公式サイトより

※ちなみに、「パックリーダー理論」も「1人の支持者がグループを支配する」という意味と、「誰もが認め合ってグループ・組織を作っていく」というような両極端な使われ方があり、議論が起きた言葉です。
参考:『世界的なドッグトレーナー、シーザー・ミランを知っていますか?』小学館 ペット情報サイトPETomorrowより

肯定派意見の例
教材イヌバーシティの監修者で、静岡県にワンコ・ワークスというトレーニング教室兼ペットホテルを経営しているしほ先生(飯島志帆ドッグトレーナー)は、自身の監修教材の公式ページでこのように述べています。

《三大柱:主従関係》
健康な心をもち、飼い主さんとの絆をしっかりと育むしつけをしていくにあたり、絶対に外せない柱が3つあります。私は「しつけの三大柱」と呼んでいます。 その三大柱は 1. 主従関係 2.コミュニケーション 3.社会化 です。

この動画では、柱の一つである「主従関係」についての講義です。

主従関係という言葉には、「誰が守る側で、だれが守られる側なのかをはっきりさせる事」です。”有無を言わせずいう事を聞かせる”ようなマイナスイメージがあるようですが、そのような誤解を解き、本当の意味で人と犬が固い信頼関係で結ばれる「主従関係」について詳しくお話をしています。

しほ先生監修 犬のしつけ教材『Inuversity(イヌバーシティ)〜いぬ大学〜』公式サイトより

〜まとめ〜

「主従関係」に限らず、言葉だけを掲げて、これは正しい/間違っていると述べている情報は意外と多いものです。
※「しつけ」「マズルコントロール」「ホールドスチル」「リーダーウォーク」など

しつけの情報は、さまざまな視点で述べられたものが特に混在するものの一つです。

専門家の人たちには、私たち一般の飼い主みんなが納得できるような情報を提供してもらいたいものですが、未だ理想通りにはいかない現状です…

情報をかぎ分けるポイントを押さえて、
その人がその言葉の先にどういう目的を見据えて言っているのかを読み解くことが大切です。

時代の流れや、個人の解釈・認識の違いで、言葉の使われ方は変わるということを頭に入れておけば、情報に惑わされることがうんと減りますよ!

最新の「主従関係」情報を意識しましょう

これからの時代で犬と楽しく付き合っていくためには、
新しい行動学に基づいた「今どき」の主従関係を学ぶよう心がけましょう!

☆「主従関係(=信頼関係)」に関連した情報を知りたいという方へ。以下の記事もおすすめです。

※「主従関係」と同じように、名前だけ見て良し悪しを語られる「リードショック」については、以下の記事で解説をしています。

子犬との主従関係については下記の記事もおすすめです

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